足引の山橘
柑橘の色の表現を調べていて、なかなか良いなと思ったお歌。
万葉集 四巻0669
春日王の歌一首
あしひきの山橘の色に出でよ語らひ継ぎて逢ふこともあらむ
山橘乃 色丹出与 語言継而 相事毛将有)
この春日王は天智天皇の息子の志貴皇子の息子だそうです。同じく春日王という表記の人が何人かが記録にあるので、ちょっとややこしい。母親が天武天皇の娘ということで血筋はとってもいいお方。ただ歌ぐらいしか記録には残ってなく、どういう人物だったのかは想像を巡らせるしかないのですが、天智系と天武系の力関係のややっこしい時代だったので、窮屈な立場だったのではないかと思われる人が恋心を表沙汰にしてしまえと言うのは面白いなと思います。
この歌の中の『山橘』は赤玉の木である『藪柑子』のことらしく、蜜柑と似た橘のことではないようですが、青々とした葉っぱの中の色鮮やかな実はなかなかに印象的。